米国で高まる在沖海兵隊不要論


米国では今、民主党のバーニー・フランク氏、共和党のロン・ポール氏ら大物下院議員が沖縄に海兵隊は不要だとの主張を展開しています。

フランク氏は7月10日に米公共ラジオ局で、「1万5千人の在沖海兵隊が中国に上陸し、何百万もの中国軍と戦うなんて誰も思っていない。彼らは65年前に終わった戦争の遺物だ。沖縄に海兵隊は要らない」と語っています(7月16日付け琉球新報)。

フランク氏は7月23日に民主党の斎藤勁衆院議員と米議会内で会談し、「日米同盟は経済・財政面も考慮に入れるべきだ。沖縄に海兵隊を置かなければならないという先入観にとらわれるべきではない」とも語りました(7月25日付け琉球新報)。

その通りです。環境を破壊する辺野古新基地建設ではなく、ジュゴンを観光資源として保護するなど持続可能な経済の発展で日米は協力するべきです。

沖縄の海兵隊は、イラク戦争でファルージャの虐殺など街全体を壊滅させるような攻撃に参加した部隊で、ミサイル攻撃から始まる先制攻撃・侵略システムの一部です。先制攻撃に対して迅速に報復できるミサイルなどは抑止力といえますが、ミサイル攻撃(報復)の後で上陸する海兵隊は抑止が目的ではありません。抑止で上陸までする必要はないのです。

フランク氏やポール氏の在沖海兵隊不要論の背景は米国の財政難などにあり、それを両氏が米国の有力サイト「ハフィントン・ポスト」に寄稿した共同論文「なぜわれわれは軍事費を削減しなければならないのか」で説明しています。

同論文によれば、2010年度の米国軍事費は実に6930億ドル(約61兆円)で、歳出全体の42%を占めます。冷戦時代の兵器削減や海外での活動縮小で10年間に1兆ドル(約86兆円)の支出削減が可能とする専門家の試算に基づいて、経済立て直しのためには軍事費削減が必要だと説いているのです。

ポール氏は「米議会では沖縄海兵隊不要論が実は根強くある」と語っており、元米中央情報局(CIA)東アジア部長のアート・ブラウン氏も在沖海兵隊不要論が米国で主流になるとみています(週刊朝日8月20日号)。

身切り論で国会議員定数の削減は主張しても、思いやり予算の削減は主張しない

このように米国で沖縄海兵隊不要論が高まっているのに、日本で相変わらず辺野古移設論にばかりしがみついているのは異常です。

もちろん米政府は一貫して辺野古新基地案が最善策であるとの方針を崩していませんが、それは日本が思いやり予算で建設・維持するという特殊な条件があるからではないでしょうか。日本が金を出すのであれば、米国にとって在日米軍基地は事業仕分けの対象になりにくい

5月28日に日米の外務・防衛閣僚が勝手に普天間基地の辺野古移設で合意しましたが、それだけではなくグアムの環境対策にまで思いやり予算を充てる計画を想定しています。

この間の日米交渉で思いやり予算カードを使うという発想は出てこなかったのでしょうか。しかも思いやり予算を増やすから国会議員自ら身を切らせてくれというお願いもありませんでした。国会議員の「身切り論」自体まやかしなのですが、思いやり予算は国民の意向を気にする必要もない聖域なのです。日本人基地従業員の身切り論はあっさり主張しても。

なぜ米国に身を切ってくれと言えないか。思いやり予算の大幅仕分け・廃止に踏み切らない日本政府の姿勢が普天間問題の障害になっているというべきで、日本の主体的な属国意識を改める必要があります。

2010年9月14日

関連新聞記事

在沖米軍基地の全面返還で
経済効果2.2倍に


沖縄県議会は9月10日、在沖米軍基地がすべて返還された場合の経済効果の試算を発表しました。基地による経済効果は年4206億6100万円であるのに対して、基地全面返還による経済効果は年9155億5000万円だから、在沖米軍基地が全面返還されれば経済効果は2・2倍になります。

「基地による経済効果」といっても、直接的な基地収入以外に沖縄振興特別措置法に基づく高率補助のかさ上げ分を算入しているので、実は純粋な基地効果を上回る分が含まれています。

それに対して返還後の跡地利用効果については、インフラ整備や建築投資などが予測困難だとして含めていないなど、少なめに見積もっています。それでも基地の全面返還による経済効果の方が大きい。

当然、雇用も増えます。基地の全面返還で基地関連の2・7倍となる9万4435人の雇用が新たに生まれるとのことです。

沖縄は基地収入や国の補助で潤沢なのではなく、逆に基地があるゆえの逸失利益の方が大きい基地押し付けという差別が経済格差にもつながっています。

2010年10月10日

関連新聞記事

「5・28日米共同声明」は守っても
「環境原則に関する共同発表」は守らない


10月22日の「県内移設がってぃんならん大集会」(主催:沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)で伊波洋一前宜野湾市長が興味深い話をされました。以下は環境原則に関する日米合意などを日米政府が無視している点について言及された部分の要旨です。

全国の米軍基地が異常な状態で運用され、日米安保は50年前の姿で存在し、地位協定は1つの改定もされず、米軍による事故が多発している。運用に一切文句を言わないという50年前の基地のあり様を脱しなければならない。

米軍は米国内で連邦法が適用されていなかったが、1978年にカーター大統領が連邦法、州法、環境基準を順守すべきと命じた。

カーター大統領は1979年に米軍は海外活動でも米国並みの安全基準・環境基準を順守すべきとし、海外基準の策定を命じたが、国防総省は放置した。

1989年から米国内で米軍基地の閉鎖が始まるが、米国内でも多くの環境汚染が発見され、90年代になってから連邦議会が海外における米軍の環境基準を調べさせた。「レイレポート」には韓国や欧州の例以外にも嘉手納のPCB汚染なども記載され、対策が求められたが、それでも国防総省は環境基準を策定しなかった。

議会の立法により、国防総省は1996年に海外における環境基準を確立した。日本でも基準は1995年にスタートし、2000年9月11日に「環境原則に関する共同発表」で、在日米軍基地の内部と周辺で環境・安全基準を守るべきとし、日米の基準のうちより厳しい基準を適用すべきと決められた。

これがJEGS(日本環境管理基準)で、日本政府は国民にその存在を明らかにせず、翻訳して国会にも明らかにしていない

米国内で被害を与える基地は存在できないが、普天間や嘉手納の騒音は環境基準を下回ったことがない。普天間飛行場の爆音は違法であると爆音訴訟の高裁判決でも示されている。

普天間に関しては1996年に航空機騒音に関する規制措置ができているが、日本政府は守らせようとしていない。「環境原則に関する共同発表」後も普天間、嘉手納の爆音は激化した。

地方自治体が環境調査を求めればそれを認めるという合意もあるが、自治体には明らかにされなかった

これらは米国政府が米国連邦議会に報告するためだけの合意で、アリバイに過ぎない。国益を損ねるという観点から海外で米軍による環境破壊・人権侵害を認めないというのが米国内の考え。しかし日本の基地にはこれが適用されない。

米軍再編だけが合意ではなく、「環境原則に関する共同発表」などさまざまな合意がある。住民のためになる合意は守らず、ためにならない合意は押し付ける

2010年11月2日

米国防長官が海兵隊の見直しを指示
英国は軍事費の8%削減を決定


海兵隊に対する疑問は米国議会だけでなく、ほかならぬゲーツ米国防長官自身も抱いています。ゲーツ氏は8月12日の講演の中で、(沖縄に駐留している)海兵遠征軍を含む海兵隊の体制見直しを海兵隊指導者に指示したことを明らかにしたのです。

ゲーツ氏は「海兵隊が海からの上陸部隊としての専門性が発揮されたのは、第2次世界大戦の太平洋キャンペーンのときだけだった」[1]と認めています。またそれに先立つ5月の演説でも「海兵隊の役割は、陸軍と何が違うのか」[2]と疑問を呈しています。イラクやアフガニスタンでの戦争の実態を見れば海兵隊はまさに陸軍そのものです。

しかも「新型対艦ミサイルを警戒するため、船を海岸から60マイル(約96キロ)以上も離れたところまで後退させなければならない」[1]というのだから、ミサイルに対する「抑止力」にはならない。

軍備の見直しは軍需企業自身が率先しているともいえます。軍需企業ロッキード・マーチンが幹部社員を対象に勧奨退職を実施するなど、軍需産業界が事業規模の縮小を進めているのです。英国政府も軍事費の8%削減を決定しています。

翻って日本では「抑止力」のために辺野古新基地が必要だといって、軍備を拡大しようとしています。普天間基地の「移設」は移設ではなく基地強化です。米国や英国における一連の軍備見直しの動きがまったく頭にない。

在日米軍基地は米国が海外に展開する基地の約30%を占めますが、普天間基地はその中のごく一部に過ぎません。解決できる普天間基地問題を解決できないのは、米国の姿勢はもちろんですが、思考停止と思いやり予算という日本の特殊事情によるところがやはり大きいといえるでしょう。

2010年11月5日

参考
  • [1]米国防長官、海兵隊見直し指示
  • [2]琉球新報ワシントン特派員・与那嶺路代氏「沖縄の基地問題:米国からの報告」(緊急シンポジウム「東アジアの安全保障と普天間基地問題」レジメ、2010年10月30日、明治大学)

高失業率の名護市:経済というより政治が基地依存では


名護市にはこの10年間で500億円を超す基地関連振興費が投入されました。しかし市の経済が振興したとはいえないようです。

500億円以上の振興費が入りながら、市債残高は171億円から235億円に増加しています。振興費といっても国が全額負担するのではなく、振興費による建設事業費の多くで市が1割の負担をしなければなりません。これが市債残高の増加につながったとみられます。

名護市の完全失業率も沖縄県内で高いレベルにあります。2005年のデータでは、沖縄県全体が7.9%[1]に対して名護市は12.5%[2] です。

生活保護についてはどうでしょうか。保護率は県平均を下回るものの、2010年度一般会計当初予算案における生活保護費の増加率は44・3%[3]で県内トップ、2009年12月における生活保護率の増加率(対前年同月比)も市部で最高の25・6%(983人、657世帯)[4]となっています。

「基地依存経済」という表現がありますが、高失業率の名護市の経済が本当に基地に依存しているとは思えません。

ドキュメンタリー映画『辺野古不合意』では、基地振興費で建てたハコモノの維持管理費、市債返済で苦しめられている名護市政が描かれています。基地に依存しているのは無責任な政治と建設大手だけというのが実態ではないでしょうか。

2010年11月13日

参考

延坪島に対する北朝鮮砲撃、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件:
在韓米軍と在日米軍、抑止力にならず


毎日新聞が11月23日21時20分の配信で韓国政府の情報として伝えたところによると、同日午後2時半(日本時間同)ごろ「韓国が黄海上の南北軍事境界線と定める北方限界線(NLL)に近い韓国領・延坪島(ヨンピョンド)」に対して北朝鮮側から砲弾が撃ち込まれ、死傷者が発生しました。まずは亡くなった方々に哀悼の意を表し、被害者にお見舞いを申し上げます。

今回の戦闘は日本にとっても他人事ではありません。尖閣諸島沖で中国漁船が海保巡視船に衝突した事件をきっかけに、先島諸島に自衛隊を配備すべきだという意見が出ていることから、日本も領土・領海がらみの軍事紛争に関る可能性があることを懸念しなければなりません。

産経新聞電子版(11月23日19時5分配信)は今回の戦闘に関して(韓国軍の訓練に対し)「射撃を行えば黙っていない」とする北朝鮮側の通知文のみしか報じていませんが、毎日新聞の同報道では北朝鮮側の見解をさらに詳しく紹介しています。

それによると、北朝鮮の朝鮮人民軍最高司令部は23日に「南朝鮮(韓国)軍が同日午後1時(日本時間同)から、延坪島一帯の北側海域に数十発の砲弾を放ち、北側がこれに対応する軍事的措置を講じた」「今回の(韓国の)軍事的挑発は、いわば『漁船探索』を口実に、わが領海を頻繁に侵犯し、(韓国が黄海の南北軍事境界線と規定する)北方限界線を固守しようとする悪辣な企図の延長」との声明を発表しています。

延坪島周辺での砲撃戦は今回だけでなく1999年と2002年にも起こっており、原因の一端は韓国・北朝鮮が軍事境界線、領海の範囲で合意していないことにあると考えられます。北朝鮮は99年にNLLの無効を宣言し、延坪島周辺を北朝鮮領海と主張しています。主張の正当性はどうであれ、今回の戦闘は領海紛争の面を帯びています。

同時に今回の砲撃戦では在韓米軍が抑止力として機能していないことが特徴で、尖閣諸島沖における中国漁船の衝突事件で在日米軍、在沖海兵隊が抑止力になっていないのと同様です。

以上は、Yahoo!ニュースに配信された下記記事を基にしていますが、同記事は24日午前2時10分現在、削除されています。

<北朝鮮砲撃>韓国で兵士2人死亡、民間人含む19人重軽傷 毎日新聞 11月23日(火)21時20分配信

キーワード「<北朝鮮砲撃>韓国で兵士2人死亡、民間人含む19人重軽傷」のGoogle検索では、毎日新聞ドメインの記事として同タイトルが表示されますが、リンク先は下記となっています。

北朝鮮砲撃:100発着弾で兵士2人死亡 韓国側も応戦 - 毎日jp(毎日新聞)

今回の砲撃は領土・領海問題で軍事緊張を高めることの問題をよく示しています。先島諸島への自衛隊配備は慎重に考えなければなりません。

2010年11月24日